- 婦人科ホルモン療法
- 若年女性の「多のう胞性卵巣」や
「月経不順」とは - 診断方法
- 婦人科で施行されるホルモン療法
- エストロゲン・プロゲスチン療法
(カウフマン療法) - プロゲスチン療法(ホルムストローム療法)
- 副作用
- 治療期間の目安と目標
- 赤ちゃんが欲しくなったら?
婦人科ホルモン療法
産婦人科は
ホルモン療法の専門家です
婦人科疾患は女性ホルモンが関係しているものが多く、適切なホルモン剤投与により治療が可能です。ホルモン剤、ホルモン療法の種類は多く、また副作用も個人差があります。
一人ひとりのその時の状況に応じたホルモン療法を的確に選択し、治療開始後も注意深くモニターすることが大切です。
若年女性の
「多のう胞性卵巣」や
「月経不順」とは
若い女性で、過度なダイエットやストレスなどで月経不順になる方は多くみられます。また、卵巣機能がまだ成熟していないためホルモンバランスが不安定であることが原因の場合もあります。月経がいつ来るか分からない不安や、妊娠の疑いがある場合の心配などでお悩みの方もいるのではないでしょうか。若年女性における月経不順や無月経などでお困りの方は、一度血液検査や超音波検査などで原因を特定することも大切です。
多のう胞性卵巣は
治らないの?
多のう胞性卵巣症候群(PCOS)は、生殖可能年齢の女性の5-8%に発症し、月経異常や不妊の主要な原因の一つとされます。病態を一元的に説明することは難しく、遺伝や環境要因など複合的な因子により発症すると考えられています。多嚢胞性卵巣症候群は、女性のライフステージによってさまざまな疾病を引き起こし、年齢や背景によって症状や治療目標も異なります。若いうちは排卵がしづらい病態に伴う月経異常や、不妊が問題となることが多いですが、性成熟期以降は2型糖尿病やメタボリックシンドローム、心血管疾患、脂肪肝などのリスク因子となるため、ご年齢に関わらず適切な診断を行い治療や予防を行うことが重要です。
診断方法は?
問診
まずは問診を行います。初潮の時期やそれからの月経周期、月経不順の徴候が出た時期、不正出血の有無、仕事や学習などのストレス、過度のダイエットの有無など、生活習慣についても詳しく伺います。
また、現時点での妊娠のご希望の有無で治療が異なるため、確認させていただきます。
ホルモン検査
血液検査を行い、ホルモンの状態を調べます。卵巣を刺激するホルモン(LH・FSH)や乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)、男性ホルモン(テストステロン)、エストロゲン、プロゲステロンなどの項目について検査します。また、必要に応じて甲状腺ホルモン検査も行います。
超音波検査
超音波検査では、子宮と卵巣を調べます。経膣超音波で子宮と卵巣を観察する方法が一般的ですが、性交渉の経験のない方や内診に不安の強い方は精度が多少落ちることもありますがお腹からの経腹超音波検査させていただくことも可能です。
初めての婦人科の受診は、ご不安が伴うことと思います。当院では、ご本人やご家族の方に丁寧にご説明し、納得された状態で検査を実施しますのでご安心ください。また、若年女性に行う超音波検査は一度行って異常が認められなければ、度々行う必要はありません。
ホルモン負荷検査
ゲスターゲンテスト
エストロゲン分泌の状態を調べる方法です。黄体ホルモンを内服して出血の有無をみます。
正しく内服できているか、副作用がないかなどをもとに治療方法の選択の参考にします。
LH・RHテスト
中枢性卵巣機能不全の診断に必要です。
TRHテスト
下垂体プロラクチン分泌を調べます。
婦人科で施行される
ホルモン療法
子宮筋腫
偽閉経療法
注射と内服の2つの方法があります(リュープロレリン、レルミナ)。 4週間に1回の皮下注射もしくは、1日1回、空腹時の内服の2種類の方法があります。治療は6回(約半年)1クールとし、主な副作用は不正出血や、更年期症状、骨密度低下などがあります。
6クールの治療後は骨粗しょう症予防のため、再開の必要があれば骨密度など確認のうえ6ヶ月は休薬します。
注射による偽閉経療法(リュープロレリン)では、一過性に子宮筋腫が増大する可能性がありそれに伴う大量出血が起こることがあります。また、子宮内膜に接している粘膜下筋腫では使用中の大量出血のリスクがあり注意が必要です。
内服のレルミナには筋腫を縮小させる効果も期待できます。生活習慣や病態により、注射か内服どちらか選択いただきます。
閉経が近いことが想定される場合には手術をせずに閉経を迎えるまで月経を止めることで手術を回避するので、閉経逃げ込み療法とも呼ばれます。
また、子宮筋腫核出術や子宮全摘術の際に、術中出血を抑えたり、事前に筋腫を縮小させることでより安全に手術を行うため偽閉経療法を行うことがあります。
閉経間際の場合は閉経を早め、手術を回避します。また筋腫核出術の術前に投与し術中出血の減少を図ります。
子宮内膜症
偽妊娠療法
中用量ピル(プラノバールなど)、低用量ピル(フリウェルLD)、超低用量ピル(フリウェルULD、ヤーズ、ドロエチ、ジエミーナ)を内服します。 内膜症にともなう月経痛・過多月経等の症状を改善します。服用初期に嘔気をきたす場合があります。
偽閉経療法
(リュープロレリン、
スプレキュア、レルミナ)
黄体ホルモン療法
(ディナゲスト)
少量の黄体ホルモンを内服します。 骨への影響が少なく長期投与が可能です。不正出血を見ることがあります。
月経困難症
子宮筋腫や内膜症がない機能性月経困難症においてもピル(中用量・低用量・超低用量)は症状改善に有用です。ピルを3週内服、1週休薬で繰り返します。月経が規則正しくなり、月経痛、経血量は軽減します。
更年期障害
ホルモン補充療法
卵胞ホルモンと黄体ホルモンを内服あるいは経皮的に投与します。長期投与する場合は子宮がん、乳がん、血栓症の定期的チェックが必要です。
排卵障害
クロミフェン療法
月経の5日目より5日間内服します。
HMG-HCG療法
クロミフェンが無効の場合など。不妊専門の施設をご紹介させていただきます。
緊急避妊
性交後72時間以内で有効な避妊法についてご指導いたします。(自費)
エストロゲン・プロゲスチン療法(カウフマン療法)
排卵や月経周期を人工的に作り、治療停止した際のリバウンド効果を期待した療法です。カウマン療法と呼ばれる治療法で、女性ホルモンが正常に働くように促す治療法です。この際の「リバウンド効果」とは、治療中に分泌していたホルモンが治療を止めた際に治療中と同様にホルモンを分泌しなければならないと働きかける効果です。なお、療法中は排卵しないことから妊娠しないとされますが、稀に排卵機能が回復して妊娠することがあるため、妊娠を望まない方は避妊を継続して行ってください。
プロゲスチン療法
(ホルムストローム療法)
黄体ホルモンを用いて人工的に排卵後、月経前の状態を作り、一定期間後に出血させる治療法です。内服が終わると数日後に出血があります。そのため、飲み忘れなど正しく内服しないと不正出血が起こります。黄体ホルモン剤として、デュファストン®、プロベラ®、ヒスロン®、メドロキシプロゲステロン®(ジェネリック医薬品)などを処方しております。
副作用
上記の治療法はエストロゲンや黄体ホルモンを用いた治療のため、特有の副作用が起こります。黄体ホルモンは安全性に優れていますが、ホルモン量によっては食欲の増加、浮腫み、体重増加などが見られることもあります。副作用が疑われる際には、ご相談ください。
治療期間の目安と目標
ホルモン治療には様々な種類があります。そのため、どの治療を選択するかなどは、妊娠の希望などを含めて人生プランに基づいてご提案します。
それぞれメリット・デメリットがあるため、患者様お一人おひとりに最適な治療方法を考えていきます。また、治療を中断したい場合は、治療中断後の治療計画を改めて決める必要がありますので、ご希望の場合はご相談ください。
赤ちゃんが欲しくなったら?
その時の治療や状態により、治療継続や変更を提案いたします。
妊娠をご希望の際にはご相談ください。