不正出血とは
月経以外で起こる性器からの出血を、不正出血と言います。少量の出血が下着に付着する程度から出血期間が長いものまであります。また、出血の色も鮮血から茶色まで様々です。
不正出血のほとんどのケースが、一時的なホルモンバランスの乱れによって機能的に起こる出血です。ただし、中には深刻な病気の症状として現れることもあるため注意が必要です。
特に、更年期におけるホルモンバランスの乱れなどで不正出血が起こることがよくあります。この頃は、閉経に向かって生理周期が乱れるため、不正出血が更年期の症状なのか腫瘍性の出血なのかを検査する必要があります。
不正出血は
身体からのアラームかも?
不正出血は、身体からのアラームと受け止めることができます。不正出血を起こす原因に子宮頸がんがありますが、妊娠・出産の多い年代に罹患者が多いのが特徴です。
不正出血があった場合は、検査を受けてその原因を特定することが大切です。
不正出血の原因
ホルモンバランスによるもの
排卵期出血・無排卵性出血・
更年期の出血
通常、生理は女性ホルモンバランスにより周期的に起こります。
卵胞からエストロゲンが分泌され、排卵後黄体からプロゲステロンが分泌されます。特に、排卵期はエストロゲンの分泌が急激に増減します。これによって、子宮内膜が剥がれ落ちると出血が起こります。これが排卵期出血となります。
また、過度のストレスや環境の変化、加齢によって排卵障害が起きると卵胞が黄体に変わらず、プロゲステロン分泌がなされないまま卵胞が退縮します。それに伴ってエストロゲン分泌が滞るため出血が起こります。これを無排卵性出血と言います。
ホルモンバランスによる出血のうち、無排卵性出血の頻度が高く、生理期間が長くなったり、生理が来るまでが長くなったりします。また、40代後半になると徐々に無排卵性の生理になることで、生理周期が短くなります。更年期は不正出血が起こりやすく、また悪性腫瘍が好発しやすいため、早めに受診し診断することが重要です。
炎症(膣炎)を
起こしている場合
膣炎
膣炎を起こしている場合に出血することがあります。主に、淋菌やトリコモナス、雑菌やクラミジアなどに感染すると膣炎を起こします。通常、膣は常在菌によって酸性に保たれていて、病原菌の増殖を防いでいます。ただし、過度のストレスや性交渉などで膣の自浄作用が低下すると膣内や子宮入口に菌が繁殖して、出血しやすくなります。
腫瘍による場合
子宮がん(子宮体がん・子宮頸がん)・
子宮内膜ポリープ・
子宮頸管ポリープ・子宮筋腫など
子宮体がん
子宮頸がんとは異なって初期段階から不正出血が見られます。特に、40代女性に多く発症します。40代後半期は更年期のため女性ホルモンが大きく揺らぎながら乱れます。不正出血がホルモンバランスによるものか、悪性腫瘍によるものではないかをしっかりと検査する必要があります。
子宮頸がん
初期段階はほとんどのケースで無症状で、病気が進行することで不正出血や茶色いおりものが増えてきます。発症が多くみられるのは、生理が起こる若い年代のため、不正出血があっても色や量だけでホルモンバランスの乱れによる出血か、腫瘍による出血かを見分けるのは難しいとされています。
子宮内膜ポリープ
子宮内膜ポリープによって生理が長引いたり、出血量が増えたりします。悪性の有無を調べるためには子宮内膜検査(子宮体がん検査)を実施します。ポリープは超音波検査や子宮鏡でも確認します。
子宮頸管ポリープ
子宮頸管(子宮の入口)にできるポリープです。性交渉時など物理的な刺激や膣炎によってポリープ表面に出血が起こることがあります。
妊娠に関するもの
性行為から約3週間前後に受精卵が着床しますが、その際に出血が起こることがあるとされます。その他、妊娠初期にみられる絨毛膜下血腫、流産などで出血することがあります。妊娠検査薬は陽性で、まだ子宮内に胎嚢が確認されていない時期の出血は、子宮外妊娠でないことを確認する必要があります。
裂傷による場合
性行為によって膣壁や外陰部に裂傷ができ、そこから出血することがあります。
不正出血に対する検査
子宮がん検査
子宮頸がんや子宮体がんは放置すると深刻な状態となる重大な疾患です。子宮頸がん検査や子宮体がん検査を行い、悪性腫瘍の有無を調べます。
超音波検査
子宮や卵巣に腫瘍がないかを調べます。無排卵によるホルモンバランスの乱れで不正出血を起こすこともあります。
おりもの検査
細菌感染すると、子宮の入口がただれます。性行為など物理的な刺激によって出血を起こすことがあります。
性感染症検査
淋菌・クラミジア・トリコモナスによって感染すると、子宮頸管が炎症を起こします。中でも、クラミジアにかかると不正出血に加えて右脇腹辺りの強烈な腹痛を伴うこともあります。その他、卵管炎や骨盤腹膜炎は不妊の原因にもなることがあるため、早めの検査と適切な治療が必要です。
妊娠反応検査
性行為から2週間が経過すると、妊娠反応検査で判定が可能になります。受精卵が着床する際に出血することがあります。妊娠5週頃の出血は生理予定日を過ぎた頃のため、生理の出血か妊娠による出血かを見分ける必要があります。
血液検査
(女性ホルモン検査など)
血液検査を行うことで、エストロゲン・卵巣刺激ホルモン・黄体化ホルモンの分泌量を調べます。出血期間が長い場合や出血量が多い場合は貧血検査も実施します。
不正出血に対する治療
ホルモンバランスによるもの
ホルモンバランスの乱れによって起こる出血は、しばらく経過観察することで自然に治ることも多いです。
ただし、出血期間が長い場合や出血量が多い場合はホルモン剤の内服や止血剤の内服など、出血を抑える治療を検討します。
炎症(膣炎)を
起こしている場合
原因となる菌に有効な抗生剤を用いた治療を行います。
腫瘍による場合
一般的な大きさの子宮頸管ポリープの摘出は外来にて簡単に行うことができます。ただし、稀に切除したポリープの病理診断結果が悪性である場合もあり、注意が必要です。また、切除に伴い大量の出血が予想される場合は、入院設備のある病院をご紹介させていただくこともあります。
妊娠に関するもの
妊娠初期に起こる出血の多くは原因不明で、ほとんどのケースで自然に治まります。
明らかな原因が特定されない場合は、慎重に経過をみていきます。
裂傷による場合
軽度の裂傷であれば自然に治りますが、重度の場合は縫合が必要となることもあります。
定期的に
婦人科検診を受診しましょう
生理以外で性器から出血がある不正出血の場合、出血を起こす原因が「がん」によるものではないと明言できることが重要です。このため、定期的に婦人科検診を受けることは非常に大切です。「がん」でなければ、不正出血があっても不安にならずに済みます。