ピルとは
主に、女性が避妊目的で使用する錠剤とされてきましたが、月経に伴う諸症状の改善効果があるため、子宮内膜症などによる月経困難症やPMS等に対して保険適応でも処方されます。避妊効果を目的とする場合、経口避妊薬(OC)と呼ばれます。主成分や作用は同じですが、子宮内膜症などの治療目的で用いられる低用量ピルはLEPとも呼ばれ、OCとLEPとで区別されます。日本国内ではまだ内服率が低いとされますが、まだピルのメリットが知られていないことが原因とされます。ピルは、避妊成功率が高いのはもちろん、月経前症候群や月経困難症など、月経に伴う様々な辛い症状を緩和でき、子宮内膜症などの治療目的でも使用できる錠剤です。
ピルの主な成分
エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンが主成分となっています。2種類の女性ホルモンの内服を継続することで体内のホルモンバランスは妊娠時と同様の状態になります。すると、身体は妊娠しているから「排卵しなくても良い」と勘違いし、排卵を停止します。これによって生理が止まり、生理痛が緩和したり、子宮内膜症を治すなどの効果が期待できます。
エストロゲン(卵胞ホルモン)は子宮内膜を分厚くし、プロゲステロン(卵黄ホルモン)は分厚くなった子宮内膜を維持する作用があります。
低用量ピルの効果
低用量ピルを服用すると、上記のように排卵を止めます。排卵を促す卵胞刺激ホルモンと黄体ホルモンの分泌が抑制されることで排卵が止まります。
また、子宮内膜が変化することで、万が一排卵しても受精卵が着床するのを防ぎます。子宮頸管粘膜が変化し、精子が子宮内に侵入するのを防ぐなどで避妊できます。
避妊効果
正しく使用した場合、避妊率は99.7%とされ、高い避妊効果が得られます。
避妊以外の効果
避妊以外に、以下のような効果があります。
- 月経血が減ることで貧血が改善する
- 生理痛が緩和する
- 生理周期が安定する
- 子宮内膜症・子宮腺筋症の治療ができる
- ニキビや肌荒れを改善できる
- 月経前症候群(PMS)を改善できる
- 生理の時期を調整できる など
低用量ピルの副作用やデメリット
副作用で多くみられるのは、飲み始めの時期に頭痛・吐き気・不正出血などの症状ですが、継続して内服しているうちに徐々に改善されることがほとんどです。
また、ピルにもホルモンの種類や量の種類があるため、副作用がお辛い方はお気軽にご相談ください。別の薬剤への変更も可能です。
- 血栓症のリスクが高くなる
- 吐き気・嘔吐
- 倦怠感
- 浮腫み
- 頭痛
- 頭が重い
- 不正出血が起こる
- 乳房が痛い・張る
- 性欲減退
- 性感染症
血栓症
ピルを服用する副作用のうち、最も重篤なのは血栓症が起こるリスクです。血栓症で死亡に至る例は約10万人に1人の割合とされます。
血栓症は、発症してしまうと確かに致命的となりうる病態ではありますが、OC/LEPを内服することで血栓症を発症するリスクとしては、内服していない女性と比べわずかに上昇するのみです。また、女性の妊娠中や産後は血栓症のリスクが一生の中で最も高い時期となりますが、それと比較しても低い水準です。したがって、しっかりとリスクを把握し、適切に内服している限りは過剰に血栓症を心配する必要はありません。
血栓症の初期症状
血栓症の初期症状は以下の通りです。
- 鈍い胸痛
- 突然の息切れ
- 胸部に押しつぶされるような痛みが起こる
- 激しい頭痛
- めまい
- 失神
- ふくらはぎの浮腫み・痛み・痺れ感
- 視覚障害・言語障害(視野狭窄や舌のもつれなど)
血栓症の危険が高まる状態
以下の項目に当てはまる状態の場合、血栓症の危険性が高まります。ピル服用中の方は、なるべく避けてください。
- 長時間同じ体勢で乗り物にのる
- 血圧が高い
- 30分以上の手術
- 中性脂肪が高い、コレステロール値が高い(脂質異常症)
- 脱水状態
- お酒の飲みすぎ
低用量ピルを飲む際に
注意すべき点
低用量ピルによるメリットもたくさんありますが、副作用の発生を抑えるために以下の点に注意が必要です。
慎重投与の方
以下のような方は、血栓症などの副作用が起こるリスクが高いため、服用の際は医師と相談してください。
肥満
BMIが25以上の方は肥満となるため、標準の方と比べて血栓症を起こす確率が2倍以上となります。
年齢
年齢が高くなればなるほど血栓症になりやすく、確立が上がります。40歳以上の方が新しくピルを服用する際は、低用量ピルではなくミニピルを服用していただいています。
喫煙
習慣的に喫煙している方が服用すると、血栓症リスクが高まり、心筋梗塞などを発症する可能性が高くなります。どうしても禁煙できない場合は、他の薬剤への変更をご提案させていただきます。
高血圧・片頭痛のある方
血栓症を起こしやすく、脳卒中や心筋梗塞になりやすいとされています。
親族に乳がん罹患者がいる方
中用量以上のピル内服で乳がんの発生に大きく関与します。乳がんとエストロゲンが関係あるため注意が必要です。
OCと薬・サプリメントの
併用について
薬局やドラッグストアで
購入できるもの
サプリメント
セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)を含むサプリメント以外は問題ありません。
市販薬
トラネキサム酸との併用は血栓症のリスク上昇の可能性があるため控えてください。
病院で処方される代表的な薬剤
抗生物質
OC作用を低下させることがあるため、内服中と内服後1週間は追加で避妊を行う必要があります。
相談が必要な薬剤
テルネリン・抗てんかん薬・降圧剤・血糖降下薬・トランサミンなどは相談が必要です。
低用量ピルの価格
疾患の治療目的の場合は、健康保険適用で3割負担となります。避妊目的の場合は、自費診療(保険適用外)となり、1シート3,000円から処方可能です。低用量ピルの価格は、保険適用または適用外、また種類によっても変わりますので、ご希望の方は当院までお問い合わせください。
低用量ピルの種類
低用量ピル
世代 |
薬剤名 | 特徴 |
---|---|---|
第1世代 (ノルエチステロン) |
LEP
|
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第2世代 (レボノルゲストレル) |
OC
|
|
第3世代 (デソゲストレル) |
OC
|
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第4世代 (ドロスピレノン) |
LEP
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低用量ピルには、目的に応じて多くの種類があります。主に含まれるホルモンの量と配合されている黄体ホルモンの種類、1シートに含まれる錠数で分類されています。問診などを参考に患者様ひとりひとりに合わせた最適なピルを処方します。
超低用量ピル
世代 | 薬剤名 | 特徴 |
---|---|---|
第1世代 (ノルエチステロン) |
LEP
|
ー |
第2世代 (レボノルゲストレル) |
LEP
|
77日間までの連続投与可 |
第3世代 (デソゲストレル) |
― |
― |
第4世代 (ドロスピレノン) |
LEP
|
ヤーズフレックスは |
低用量ピルよりさらにホルモン量が少なく副作用が少ない反面、不正出血が起こることもあります。
保険適用のピル「LEP」
疾患の治療や症状緩和を目的に使用される低用量ピルをLEPと言います。
生理に関わる症状の緩和に適した低用量のホルモン薬(エストロゲン、プロゲステロン配合)です。
LEPの種類
- ルナベルULD
- フリウェルULD
- ルナベルLD
- フリウェルLD
- ヤーズ
- ヤーズフレックス
- ドロエチ
- ジェミーナ
- アリッサ
保険適用外の自費ピル「OC」
避妊目的として使用される低用量ピルをOCと言います。
OCの種類
- ラベルフィーユ
- トリキュラー
- ファボワール
- アンジュ
- マーベロン
低用量ピルの服用方法
月経開始5日以内に開始し、毎日1回1錠を服用し続けます。毎日続けることで効果を得られます。
さらに効果を得やすいように、朝食後や昼食後など、ご自身の生活習慣の中で内服する時間を決めておくことをお勧めします。
ピルを飲み忘れた場合の対処法
実薬を飲み忘れてから
24時間以内の場合
実薬を1錠飲み忘れたことに1日以内に気がついた場合は、飲み忘れに気づいた時点で忘れた分をすぐに飲みましょう。そのほかに、その日に飲む分のピルをいつもの時間に飲みます。
実薬を飲み忘れてから
24時間以上経ってしまった場合
24時間~2日経っていない場合は、気が付いた時に2錠飲みます。 2日以上忘れてしまった場合は、そのクールの内服を中止します。ピルの種類によりますが、4日~7日休薬後に次のクールの内服を再開します。この場合は排卵も再開するので、避妊効果が低下する可能性があります。低用量ピルの内服を7日間続けるまでは、コンドームなどの避妊法を併用しましょう。
偽薬を飲み忘れた場合
偽薬は飲み忘れても問題ありません。飲み忘れた分はそのまま捨てて、本来の日付のところから内服を再開しましょう。