プレコンセプションケアとは、2012年WHO(世界保健機関)が「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会学的な保健介入を行うこと」と定義し、
将来望むかもしれない妊娠について健康維持の役立てを図るという考え方を言います。
プレコンセプションについて
プレコンセプションの定義
コンセプションケアのプレはPre「~の前の」の意味で、コンセプションはconception「授精・懐妊」を意味します。将来の妊娠を計画する女性やカップルに対し、妊娠前から妊娠初期にかけての健康管理において、医療と支援を包括的に行うことを定義とします。これによって、健康な妊娠の維持と安全な出産、胎児や母体の健康リスクの早期発見・早期治療など、最適な環境で対応を行うことを可能にします。
プレコンセプションの目的
主に、妊娠前の健康管理を行うことで、妊娠中の健康リスクを予防または最小限に抑える、母体や胎児の健康を維持・促進することを目的とします。プレコンセプションケアを実施することで、より健全な妊娠・出産の機会を増やし、お子様たちの健康維持を図ります。具体的には、妊娠前の生活習慣の評価を行い、必要に応じた改善や対策を進めます。
例えば、妊娠前に病気が判明している場合は、妊娠を希望する時期にはなるべく健康でいられるよう、医師との連携で治療計画を立てることが必要になります。加えて、栄養バランスのとれた食事習慣、適度な運動習慣、飲酒や喫煙習慣の制限など、生活習慣の改善や維持についてアドバイスを行います。このように、妊娠前からプレコンセプションケアを行うことで、妊娠中の合併症や流産・早産・低出生体重児などのリスクを軽減し、健康な赤ちゃんを出産することが可能になります。
プレコンセプションは
なぜ大切?
上記のように、健康で安全な妊娠と出産を維持するためには、プレコンセプションケアは重要な役割を果たします。健やかな妊娠及び出産は、妊娠前の女性の健康状態を最適な状態に維持することが重要です。これには、将来妊娠を望む女性だけではなく、パートナーとなる男性が共にプレコンセプションケアを知って実践していくことが大切です。カップルで行うケアとしては、避妊方法の選択や評価、妊娠に影響を及ぼす薬物や疾患への理解と把握、感染症の予防接種などがあります。また、妊娠中の健康管理と合併症などのリスクの早期評価が重要です。妊娠前からケアすることで、妊娠中のリスクを最小限に抑えることが可能です。
プレコンセプションケアで
知っておくべきこと
プレコンセプションケア
において知っておくべき
感染症とワクチン
妊娠・出産に影響を及ぼす感染症について理解することも重要です。
風疹
妊娠初期に風疹に感染すると、胎児が先天性風疹症候群を発症して深刻な奇形のリスクが高くなります。風疹の主な症状は、全身の発疹です。短期間に広がるのが特徴です。風疹のワクチンは妊娠中は投与できないため、妊娠する前に予防として風疹ワクチンを接種することを推奨しています。生まれた年代によって接種した風疹ワクチンに抗体がつきづらい、年数が経つにつれて減少する、ワクチン効果が出にくいなどがあります。このため、血液検査で風疹抗体価を調べることも必要になります。厚生労働省では、妊娠している女性のご家族など周りの人も風疹ワクチンを接種することを推奨しています。
麻疹とおたふく
(流行性耳下腺炎)
妊娠中に麻疹にかかっても、胎児の発達に影響を及ぼすことは少ないとされています。ただし、重症化すると流産や早産を起こす恐れがあります。そのため、麻疹ワクチンも妊娠前に接種することをお勧めしております。なお、麻疹と風疹は、混合ワクチン(MRワクチン)があるので同時接種が可能です。
水痘
妊娠初期に水痘に感染すると、胎児が先天性水痘症候群にかかる恐れがあります。また、流産や早産を起こす可能性があるほか、妊娠中に重症化しやすいことも分かっています。水痘は、幼児期に予防接種を行いますが、年月の経過によって接種効果が薄れていることがあります。水痘も風疹と同じように血液検査で抗体価を確認できます。妊娠前に水痘ワクチンの接種をお勧めしております。
百日咳
百日咳は最も感染力が強いとされています。生後間もない赤ちゃんが感染すると、命の危険に及ぶ深刻な状態になることがあります。妊娠中は百日咳のワクチンは接種できないため、妊娠前に接種することをお勧めしております。
インフルエンザと
新型コロナウイルス
インフルエンザや新型コロナウイルスは、妊娠中に感染すると重症化しやすいとされています。胎児に深刻な影響はないとされていますが、流産や早産の発生リスクは高まってしまいます。いずれも妊娠中にワクチンの接種は可能です。プレコンセプションケアにおいても、感染症の感染リスクを抑えることで、母体も胎児も健康を維持できます。
プレコンセプションケア
において知っておくべき
合併症妊娠
既に持病がある方が妊娠した際は、合併症妊娠とされます。病気には、高血圧や糖尿病、心疾患、精神疾患など様々です。妊娠は疾患ではありませんが、妊娠することで持病がさらに悪化する場合があります。そのため、持病のある方は妊娠する前に病気を安定させる、治療しておくことが重要です。薬物療法で病気をコントロールすることで妊娠を維持することもできます。現在、持病の治療中の方で妊娠が分かった方は、自己判断せず必ず医師にご相談ください。治療と妊娠を同時に継続する方法を決めていきましょう。
妊娠前から気を付けて
おきたい健康管理
妊娠前から気を付けておきたい健康管理は、以下の内容です。
健康的な食事習慣
バランスのとれた食事習慣が大切です。また、葉酸やビタミンDなど食事のみからでは不足しがちな栄養素に関しては上手にサプリメントも併用することも必要です。
適切な体重維持
適切な体重は、BMI18.5以上25未満とされます。BMIは、体重kg÷身長m÷身長m(体格指数)で算出されます。妊娠前から適切な体重を維持することは、妊娠中の健康維持と赤ちゃんの健康に重要とされています。
適度な運動習慣
妊娠前から適度な運動習慣を身につけておくことで、妊娠中も適切な体重を維持できます。また、運動は精神的にも良い影響があります。ウォーキングやヨガ、ストレッチなど軽い運動を1週間に150分以上行うことが望ましいとされています。
健康診断・検診
妊娠前から健康診断や検診を定期的に受けることは非常に大切です。ご自身の状態を知ること、微細な病変の早期発見が可能です。さらに、歯科検診や性感染症検査なども重要です。
健康的な生活習慣
食事習慣・運動習慣・良質の睡眠のほか、飲酒や喫煙習慣の改善など、健康的な生活習慣を妊娠前から意識することが重要です。また、過度のストレスや疲労を溜めないよう、適度にストレスを発散し生活リズムを整えることが大切です。
病気や感染症の予防
妊娠前に受けられるワクチン接種があります。女性だけではなく、ご家族やパートナーも一緒に予防接種することで出産の安全性が高まります。
プレコンセプションケアの受診
プレコンセプションの
対象となる方
将来、妊娠を希望する可能性のある全ての女性とパートナーが対象です。具体的には、以下の通りです。
- 妊娠を希望している女性とそのパートナー
- 既に病気を持っている方、手術経験のある方
- 妊娠に関わるリスクがある方
- 前回の妊娠や出産が大変だった方
- 不妊症の可能性がある方、問題を抱えている方
プレコンセプションケアでは、将来妊娠を希望している方のサポートに必要な検査・予防対策・健康相談などを行っております。
プレコンセプションケア
セルフチェック
国立成育医療研究センターHPには、プレコンセプションケアチェックシート(女性用・男性用)を掲載しています。セルフチェックできるので、気になる方はご覧ください。
お悩みのある方は
一度ご相談ください
プレコンセプションケアは、将来の妊娠期間のためだけでなく、現在のご自身やご家族の生活習慣や健康状態を知る良い機会となります。プレコンセプションケアについて、どなたでもお気軽に当院までご相談ください。